花と神話~クロッカス

クロッカスの花が生まれた時の物語です。
伝令の神ヘルメスはクローカスと結婚の約束を交わしていました。彼女は美しい娘でした。

ある日雪の降った後よく晴れたので、ヘルメスとクローカスはソリ滑りに出かけました。一面の銀世界で風もなく穏やかな日でした。二人は雪の野原を滑ったり、転んだりしながら時間のたつのも忘れて遊んでいました。

太陽が西に傾きいつの間にか風も出て寒くなってきました。もう帰らなければならないと気が付いた二人は、大急ぎで帰り支度を始めました。まずクローカスをソリに乗せ、次にヘルメスが乗ろうとしたその時、突然強い風が吹きました。その風に押されたようにソリはクローカスだけを乗せて谷底めがけて滑り落ちて行きました。慌ててヘルメスはソリの後を追いかけて行ったのですが、ソリもクローカスも見当たらず目に見えるものは雪ばかりでした。

「クローカス、どこにいるの。」
と叫んでもむなしくこだまが返ってくるだけでした。それでもヘルメスはあちこちとクローカスを探し続けましたが、どうしても見つかりませんでした。

探しつかれたヘルメスが最後に行った谷底でとうとう見つけ出すことができました。しかしそれはバラになったソリと真っ白な雪を血に染めて横たわっているクローカスだったのです。すっかり夜になるまでヘルメスは彼女を生き返らせようとありとあらゆることをしたのですが、彼女は二度と目を開けることはありませんでした。

次の年の冬になってもヘルメスは愛しいクローカスのことを諦めることができませんでした。そこで再びクローカスが死んだ谷に出かけていくことにしたのです。谷に来てみると驚いたことにクローカスが血を流したあたりに美しい花が咲いているではありませんか。

ヘルメスはこの花をクローカスの生まれ変わりだと思いました。二人の愛のしるしとして、ヘルメスはこの花にクロッカスという名前を付けたのでした。それ以降、この時期になるとクロッカスは二人の愛をまだ忘れてはいない証ででもあるかのように、可憐な花を咲かせ続けているのです。クロッカスの花言葉は「不幸な愛」です。

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