万葉の花々(8):番外《春の七草4》~スズナ

すずな(菘)→  カブ(蕪)

日本へは時期は不明であるがかなり古い時代に(弥生時代という説もある)、中国または朝鮮半島からもたらされ、スズシロ(大根)とともに重要な根菜とされてきたと考えられている

古い記録では『古事記』(712年)に記されている「吉備の菘菜(あおな)」はカブのことと見られている『日本書紀』(720年)にも、持統天皇が栽培を推奨したとの記述がある。奈良時代の朝廷が、根に養分を蓄える野菜づくりを奨励し、五穀に次いで重要視されて、各地に伝統的なカブが誕生することになった。東北地方では、古くから焼き畑でつくる作物として毎年栽培されたものが、保存して冬から春の間に食べる食料にされた

江戸時代になってから日本各地に広まって、各地域ごとに特徴ある栽培品種が多数作出された。日本在来種のカブは味が良く、明治期に西洋から導入された品種は不評で根付かなかった。

京野菜など西日本で見られる中国伝来のアジア系とともに、東日本でヨーロッパ系(野沢菜など関連する変種も含む)が在来種として確認され、シベリア経由と見られている

*品種

日本には白い丸形の小カブをはじめ、赤カブや長カブ、大型のカブなど各地で在来種が根付いており、量は少ないながらも約80品種が生産され、多様な品種が存在した日本の伝統野菜の代表例でもある。

日本で最も一般的に流通しているのが寒さに強い小型の白カブで、これはヨーロッパから朝鮮半島を経て渡来した系統で、中でも金町小カブが代表的な品種である。カブには直径10センチメートルを超える大カブや、根茎部が長さ20センチメートル以上になる長カブ、赤い色の赤カブがなどあり、ヨーロッパ系の品種では根茎が黄色の黄カブもある

聖護院かぶなどの大型かぶは、繊維が少なくて肉質は緻密である。カブの色が白色ではないものは「色カブ」ともよばれ、紅色や紅紫色、上半分は紅色で下半分が白色などになり、品種も数多く、日本海側にかけて多く栽培されている。日本で産出されるカブは世界の植物学者から「カブの第二の原産地」と例えられるほど、品種が豊富にある

東京近郊で栽培される金町小かぶには、数多くの系統があって、日本全国各地で栽培されている。地方特産の在来種の数も多く、小カブ以外は周年生産されていない。地方品種を東西(ヨーロッパ系とアジア系)に分ける線は関ヶ原付近に引くことができ、西日本のカブは葉や茎に毛があるものが多く、東日本はツルツルしたカブが多い。農事関係者は、地理的に系統が分かれるこの線のことを「かぶらライン」と呼んでいる(中尾佐助による命名)。

日本国内で生産される欧米種としては、大型で黄色いゴールデン・ボール、スノー・ボール・アーリー、夏採りのパープル・トップ・ミラン(ミラン・ルージュ)などがある

利用目的に合わせて品種改良が行われた結果多くの野菜(タイプ)が生まれた。ハクサイ、チンゲンサイ、コマツナ、ツケナ類は全てカブの仲間であり、広義のカブ菜類に含まれる。したがって相互の交配が容易である。

*料理

カブは漬物をはじめ、蒸し煮や炒め物、シチュー、すりおろしなど、様々な料理のバリエーションで使われ、調理法によって食感も変化する

そのままでは固いため、生食よりも煮物や味噌汁・シチューの具材としての利用が多いが、大根おろしのように蕎麦の薬味としても利用される。加熱すると一転して非常に柔らかくなるため、ダイコンのようにじっくり煮込む料理には向かない。葉の部分は、新鮮なうちに浅漬けや油炒めなどにして食べられるほか、アクが少ないため茹でてお浸しや汁の実にも適している。赤カブなどの色カブは、たいてい漬物などに加工して利用される

日本料理では風呂吹きにも利用される。また、浅漬け、糠漬け、千枚漬け(聖護院かぶら)、酸茎などの漬物に加工される。かぶら寿しは石川県金沢市の郷土料理で、日本海で採れた塩漬けの寒ブリを、薄く切った金沢青かぶに挟んで、米麹で漬け込んだ江戸時代から続く伝統料理である

*栄養価

根の部分(いわゆるカブ)には水分が約94%含まれ、可食部100グラム (g) 中のエネルギー量は約20キロカロリー (kcal) で、炭水化物が4.0 g、たんぱく質0.7 g、灰分0.6 g、脂質0.1 gが含まれる。またビタミンC、カリウム、食物繊維が含まれ、ダイコンの根の部分の栄養素とほぼ同じである。とりたてて多く含まれている栄養素は見当たらないが、ビタミンCがやや多い

デンプンを分解する消化酵素アミラーゼ(ジアスターゼ)がたくさん含まれているので、生で食べると、米飯・パン・麺などの主食を食べ過ぎたときの胃もたれや胸焼けの解消に効果がある。刺激性辛味物質の元となっているグルコシノレートを含んでおり、加熱調理して食べることによって肝臓の解毒作用を活性化させる働きがあるといわれている

葉の部分は根とは全く異なる栄養素を持ち、β-カロテン、ビタミンC、カルシウムが豊富に含まれ、緑黄色野菜に分類される。特に体内でビタミンAに変換される色素成分β-カロテンは、可食部100グラム (g) 中、2800ミリグラム (mg) と極めて豊富に含まれる。ビタミンCは免疫力の低下を予防し、食物繊維は便秘の解消や、生活習慣病の予防に役立つ栄養素といわれている

*薬用

塊根の部分(いわゆるカブ)は蕪青根(ぶせいこん)、種子は蕪青子(ぶせいし)と称して薬用にもされ、塊根部は食べ過ぎ・糖尿病・黄疸・しもやけ、種子は目の充血に効能があるといわれる。塊根は胃腸を温める働きがあり、種子は熱を取り去る作用があるといわれ、共に市販のものが用いられる。民間療法では、1日1 – 2個のカブを調理して食べるか、しもやけではすりおろしたカブの塊根を患部に貼るとされる。種子は粉末状にして1日量2 – 3グラムを3回に分けて飲む用法が知られる

*文化

かぶな、すずなはともに冬の季語で、その白さを降雪に関連づけた詩歌が見られる。カブの葉はスズナ(鈴菜、または菘。根の形を鈴に見立てた)として、春の七草にも数えられていて、現代でも葉が付いた状態で販売されている事が多い。

古代中国でも、春には苗、夏には心、秋には茎、冬には根をそれぞれ食する蔬菜として重要だった。また、中国の軍師として知られる諸葛亮が行軍の先々でカブをつくらせて兵糧の一助とした逸話にちなみ、カブのことを「諸葛菜(しょかつさい)」と呼称することがある。地味に乏しい土地でもよく採れるため、貧しい農民たちは随分助けられ、感謝の意を込めたものだという。

ロシアでは、『おおきなかぶ』のように民話の題材になるほど馴染みのある野菜である。一方、カブがあまり好まれないフランスでは、大根役者に相当する「カブ役者」という言い回しがある。

*すずなの花言葉:「慈愛」「晴れ晴れと」

ソフィア

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